手塚治虫ゆかりの地を訪ねて―

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(手塚ファンマガジ ンvol.180掲載)
第9回 電気科学館の プラネタリウム

初期SF三部作をはじめ、『鉄腕アト ム』『マグマ大使』 『W3』『未来人カオス』…数々のSF漫画作品の原点が、ここ大阪にあります。日本で初めてプ ラネタリウムが導入された、四ツ橋の大阪市立電気科学館。一 九三七年三月に開館して以来およそ半世紀にわたって親しまれてきました。
 
 手塚先生がこの電気科学館へ行く きっかけとなったのが小学校 の同級生、石原実さん。手塚キャラではおなじみ金三角のモデルとなった方です。現在、石原時計 店の社長さんで、小さい頃から大変な科学少年だったとのこ と。当時、四ツ橋から徒歩五分の心斎橋南詰に石原時計店があり、「今度近くに電気科学館ができ たから」ということで、石原さんのお父さんに連れられて遊び に行ったのが最初だったそうです。以来手塚先生は天体に魅せられ、通いつめるようになりまし た。

 
 このプラネタリウムは、ドイツのカール ツァイス社製で、当 時、最先端の技術で作られた ツァイスU型というものでした。このプラネタリウムに強烈な印象を受けた手塚先生は、のちに『漫画 天文学』の中で同機を登場させています。また、自宅の押 し入れの中で自家製のプラネタリウム上映をしたというエピソードは皆様ご存知のとおり。それから、 電気科学館の展示物の中に「まぼろしの花」という凸面鏡 を使ったトリック装置があり、こちらも『ビルの中の目』で描かれています。
 
 その電気科学館は一九八九年、奇しくも 手塚先生がちょうど亡 くなられた年の五月に閉 館、八年後に解体されました。しかし、手塚先生が魅せられたプラネタリウムは今でもその姿をとどめ ています。電気科学館からバトンタッチされた大阪市立科 学館。高い吹き抜けの天井にガラス張りのエレベーター。四階までの常設展は触って遊べる展示物が豊 富でまる一日楽しめる空間です。地下一階のサイエンスシ アターでは日本最大級のプラネタリウムとオムニマックスが体感でき、昨年はここで大型映像 「ROBOT〜夢のアストロボーイへ〜」の上映もありました。そ の一角にかつて電気科学館で活躍したツァイスU型プラネタリウムが展示保存されています。同機は二 〇〇〇年一二月には大阪市の有形文化財に指定され、その 際、手塚先生のサインが入った『漫画天文学』の原稿も一緒に展示公開されたそうです。
 
 ところで、最近とても興味深い話を聞き ました。なんでも電気 科学館で戦前に販売されていた「プラネタリウム」というお菓子が現在復刻販売されている、というの です。この話に私は興味津々!次回はそのお菓子の話をい たしましょう。


【関連サイト】(外部リンク)
大阪市立科学館学芸課 加藤賢一氏の ページに研究内容が掲載されています。
「手塚治虫と電気科学館」
「電気科学館史写真集」

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