手塚治虫ゆかりの地を訪ねて―

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(手塚ファンマガジンvol.184掲載)
第13回 石原時計店訪問記【後編】
 
 このイラストは、池田附属小学校のクラ ス会の写真を元に 手塚先生が描いたもの。同級生の特徴を風刺的に描いているのがおもしろいですね。石原時計店で私は この原画を見せていただきました。上右端でカメラを持っているのが石原実さん、右から2番目が『手塚治虫少 年の実像』の著者・泉谷迪さん、右から3番目で こそっと顔を出しているのが手塚先生。右から6番目で腕に抱えられていて帽子をかぶっているのが大森俊祐さ ん。真ん中で鍬を持っているのが担任の乾 秀雄先生です。

▲豊中三中での講演 終了後、校長室で中学生に 贈るためにボールペンで描かれたキャラクターたち
 石原さんはクラス会の幹事で、今で も毎年主催しているそ うです。すごいと思いませんか!?戦争をはさんで半世紀以上もず〜っと同窓会をし続けるって並大抵のこ とではありません。しかも小学校の同窓会!たいてい は小学校の友達って大人になると離れてしまうし、一生を通じての友人付き合いをしていけるなんて…。半 世紀の時を越えて一生友人として付き合っている西組 クラスメイトの深い友情を感じました。

 漫画家として多忙を極めた手塚先生でしたが、この池附のクラス会には度々出席されています。同級生の ためなら、と快く応じ、‘88年には、豊中市立第三 中学校で講演。これは三中で当時校長先生をされていた大森俊祐さんの依頼によるもの。講演終了後、校長 室で描かれたイラストが大森さんの手元に残されてい ます。
 
 石原さんや大森さんなど同級生の 方々と接していると、今 まで見えてこなかった真の手塚治虫像が見えてきます。中にはいわゆる“手塚治虫伝説”を覆す内容も。そ のひとつが「手塚先生は本当はいじめられっ子ではな かった!」ということでしょうか。泉谷さんは著書の中で、「同級生の名誉にかけていじめは無かったと言 いたい。」と語っています。既にたくさんの手塚治虫 伝によって人口に膾炙している「いじめられっ子だった説」は、手塚先生のささやかなフィクションであ り、また今に生きるいじめられっ子に対する愛情をこめ たメッセージだったともいえるでしょう。

 「このクラスは、本当に仲がよくて誰もいじめたり仲間はずれにするようなことも無かった。こんなにい いクラスは他になかった。」と石原さん。だから、 「手塚君がいじめられっ子だなんてありえない」と(笑)。リップサービス旺盛な手塚先生は、その人生ま でもドラマとして描いていたのですね。


■株式会社石原時計店 公式サイト
 歴史ペー ジを田浦紀子が執筆いたしました。また HPデザインも手がけています。


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